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パレスチナにおいて、ハマスの精神的指導者ヤシン師がイスラエルの攻撃によって死亡したようです。
 小泉首相は、「暴力の連鎖、憎しみの連鎖を早く断ち切らないとね。お互い自制心を持って平和的解決に向けて努力していただきたい」と述べ、また福田官房長官は「わが国はイスラエル政府に最大限自制し、事態の沈静化を図ることを強く求めたい。今回のことによって、パレスチナの過激派が暴力行為を一層激化し、暴力の連鎖が拡大することを強く危惧(きぐ)している」と述べたそうであるが、ヤシン師の死亡はアメリカのアフガニスタンイラク攻撃の流れと直結している。つまり、今回のイスラエルの行動はアメリカのアフガン侵攻以降の(共和党政権成立以降のと言うべきかも知れないが)既定事項に沿って起きた当然の帰結なのである。

 しかし、イスラエルはここで既にパレスチナ側との対話を放棄したと言ってもあながち嘘ではないのではないかと言う気がする。パレスチナ側が長い闘争の時にあって様々な流れを作っていたのは周知のことと思われる。(アラファト氏のPLOやヤシン師のハマスなど)当然どれか一つと同意に至れば解決するような単純かつ容易な和平交渉でないことは今までの歴史が示している。その中で、パレスチナの地、すべての返還を原理主義的に求めてきたハマスの妥協の可能性はヤシン師にかかっていたと言っても過言ではない。ヤシン師なきハマスは指導者を欠くことになるかと言うとそうではない。しかし、ヤシン師を欠くことで統一した見解で和平に臨みにくくなり、また原理主義者を抑えにくくなるのは明白である。

 今回の件に関しては、ブッシュ政権ですら簡単に見過ごすことは許されないであろう。しかし、イスラエル右派から「あなたたちがやっていることと同じことをしたまでだ」と返されるのは目に見えている。また、ブッシュ政権もノーリアクションではいられないと言うだけで実際にイスラエル政府に対して圧力をかけるかというと疑問に思われる。

 イラク問題を含めて元来「中東・アラブ」の人々から中立と見られてきた日本の「正義」は今回の自衛隊イラク派兵によって半ば以上に失われた。天木直人氏のような方が外務省で実際に力を振るえていたらと思われて遺憾に思う。