まあね…

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20050222k0000e040077000c.html

小泉首相激怒:
「警官が犯人から逃げるとは何事か!」
 22日午前の閣僚懇談会で、小泉純一郎首相が金属バットのようなものを振り回す男から警官が逃げ出した事件を取り上げて「警官が犯人に追われて逃げるような場面を(テレビで)見た。逃げるとは何事か。よく状況を精査して注意するように」と激怒する場面があった。
 事件は19日朝、東京都港区の通称お台場で発生した。薬物中毒の疑いがある男性容疑者(26)が交通事故を起こし、駆けつけた警官に「近づくな、殺すぞ」と怒鳴りながら金属バットのようなものを振り回した。無人のパトカーで逃げようとしたところを逮捕したが、取り押さえる過程で警官が容疑者に追いかけられる様子などが民放で放映された。
 村田吉隆国家公安委員長は「ご指摘のようなことがあればおわびしたい。指示を徹底したい」と陳謝した。
毎日新聞 2005年2月22日 12時47分

 この問題、放送していたのは、お台場にある某局だけでした。それは、当然といえば当然のことにそもそも事件があったのがお台場だったからです。
 この問題いくつか論点が挙げられていますし、この件だけを取り上げて「警察官なさけない」と言っている方もいらっしゃるようです。しかし、本当にそうなのでしょうか?

 問題点のピックアップから始めたいと思います。
1、犯人から逃げたのは正しい判断か?
2、パトカーにキーがつきっぱなしであったのは問題か?
3、警察官の武器使用規制に問題があるのではないか?
の以上の3点が今回の事件における問題点だろうと思います。

 では、まず1から。テレビの映像を見る限り、今回取り押さえられた犯人(逮捕の理由が、正確にはパトカーの窃盗未遂なので、この時点では何の犯人とも確定されていません。)*1その時点では。被疑者と言う訳でもない男性が、自分の車の中でバットを振り回し暴れている。これだけで、十分想定しうる状態とは言えません。*2
 その人物が、突然バットを持って飛び出してきました。基本的に相手が得物、特に長いものを持っている場合、それを取り押さえるのは困難です。取り押さえられる条件としては、相手がその武器を有効に使えない、あるいは自らにその武器以上の長さのある得物があるということが必要になると思います。*3今回の最終的な取り押さえは、前者で相手がパトカーという密閉空間に入り込んだことでその長い得物を使えなくなったことから肉弾で取り押さえることが可能になったと言えます。
 では必ずしも何者ではない相手*4が暴れている際に警官が相手に犯罪を起こさせずに*5おとなしくさせるには「遠巻きに見守って疲れるのを待つ」「得物を手放すのを待つ」などの選択肢しかないと言えます。敢えて殴られに行く必要など何も無いのです。しかも、現場には交通事故に対応しに来た警官しか居らず、2,3人だけでした。つまり包囲して相手を待つには基本的に足りなさ過ぎます。
 上記から、ここでの問題は警察が急ぎ距離を取った(敢えて逃げたとは言いません。)ことにあるのではなく近くに民間人(マスコミだけだった気もしますが)を追い越してしまったことにあると言えます。しかし、これはマスコミがカメラを展開したがゆえに逃げ遅れただけで一般健常人(一般の方でもお年寄り、子供は追い抜いてしまっていた可能性もあるので・・・。)であれば各自の判断で距離を取っていたでしょう。
 ゆえに、1の部分で問題になることは何も無いといえます。


 では2はどうでしょうか。まず、上述しましたが初動の警官は交通事故の処理のために来ています。それを踏まえてあの場面を見ると。交通事故を引き起こした側が未だ車内に残っています、その場合想定される問題の第一は、彼が車を発進させることです。その場合追うのは現場に到着していた「あのパトカー」の仕事です。ゆえに、確かに「車を離れる際にはエンジンを切る」という規則には違反しているかもしれませんが、多少差し引かれるものがあると思います。それと同時に1でも述べたように結果あくまで結果ですが取り押さえられたとも言えます。
 これは警察内部の規則違反であり、倫理的に大きな声で批判されるような問題ではありません。(アイドリングストップが問題と言う方は別で…)


 最後に3になりますが…。1でも、状況について報じられている範囲で簡単に触れましたが「バットを持って車から飛び出してきた」段階では相手は犯罪者ではないのです。ですので公権力の執行は、最低限の範囲でしか認められないと考えられます。周囲に危険が及ぶと想定できるので、全く行使できないと言うものでは無いでしょう。ですので「銃撃」するなどはもってのほかであると言えます。殺傷能力の高い銃(と言ってもニューナンブは犬も殺せないと言われるそうですが。)の使用は不可能です。ですからそれを緩和したところで意味がありません。警棒の使用も長さという観点から言えば、今回に関しては難しいと言えるでしょう。現在の銃器の代わりに、あるいは平行して後遺症なども少ないノンリーサルウェポンを配備するというならば一考の余地があるかもしれませんが、緩和では何も解決しないでしょう。


 以上のことから、今回の件は起こった状況が特殊だった。最初から、暴れる男がいるという状況であれば、警察の対応も違うものになったでしょう。相手が話も出来ず、いきなり暴れられたらそもそもどんな人間にも対応策は少ない。と考えられることから、警察が特別悪かった訳でも、醜態をさらした訳でもなく。
 マスコミがたまたま撮ったハプニングを面白おかしく流してしまった、ということの方が問題であったように思います。
 今回の件に類するようなハプニングなんて「警察24時間」系のドキュメント番組ではよくあることではという気もします。

*1:事故の当事者ではありますし、薬物中毒の症状らしき奇矯な行動はありますが。

*2:常軌を逸していると言えるでしょう

*3:その上で相手より人数が多い必要もありますが。

*4:なんら、現行犯で捕まる要件を満たしていないと言う意味で。

*5:無理やり介入して殴られて「公務執行妨害」成立させることの問題はご理解いただけると思います。