選挙を巡ってのニュース

  • 1票格差2・17倍は合憲 最高裁、区割り変更後で初判断

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007061402023904.html
裁判所 | 裁判例情報
個人的には最低一都道府県*1に一枠確保する「一人別枠方式」は問題があると考える。しかも、今回問題になっている最大差がでている地域というのは兵庫第6区と高知第1区の間でである。ちなみに、高知は全部で県内は3区に分けられる。
詳細は上記紹介の判例における」ということを繰り返しているだけのあまりに内容のない判決。見かねるような差がどの程度か、「一人別枠方式」がなぜ選挙における平等性、議員の国民代表性をゆるがせにしないのかきちんと論じない限り。泉徳治裁判官の反対意見にある「国民がいずれの都道府県に居住するかによってその発言権に軽重を付けることは、選挙権の平等、議会制民主主義という憲法原理に違反することが明白というべきである。」に答えることをしていない。

が、これよりも後半部に個人的興味は集中する。
平成6年の選挙制度改正により、政党にのみ政見放送が認められるなどの制度変更が行なわれたことに関して、既成政党候補者とそれ以外の候補者とを差別的に取り扱っているのではないかとという問題指摘の部分である。
この部分も主文は、「政党、政策本位」の選挙を目指すと決めたのは国会であり、国会に選挙制度改正の裁量権がある以上問題ないという全く憲法の意義を無視するかのような判決を下している。国会が既存政党が最大多数で占められている以上、その既得権益を最大化するような選挙制度変更はそれが本当に現制度より悪いものにならないか厳密に判断されなくてはならない。その内容に関しては、司法が携わることではないことは私は三権分立の立場から当然と思う。しかし、今回の法改正は明らかに憲法で否定される「差別」を「既得権益の強化」の一方で生んでいる。「政党助成金」と「選挙制度改正(内実は既存政党外勢力の参入妨害)」が組み合わさる時、既存政党とそれ以外の政治勢力の格差は実際に眼に見えるもの以上に拡大する。デュベルジュの法則を引くまでもなく、議会勢力配置が選挙制度に大きく左右されるのは経験的真実である。そういった議会の暴走をも止めるのが「憲法」の意味であろうに、その番人たる役割が期待される最高裁判所までもがそれを廃棄しようと振舞うさまはまさに以上としかいえまい。
また補足意見における津野修裁判官のながながと書いてある馬鹿話は学問的検証を何も経ていない空疎極まりないものであると言わざるを得ない。政策・政党本位の選挙とは何か、そのために新規参入障壁を高くすることが民主主義や社会の流動性にいかに損害を与えるかと言う論議を無視した意見で自分の発言に酔っているとしか思えない。いかにも、憲法を捻じ曲げるだけ捻じ曲げてきた内閣法制局上がりという感じである。

裁判所|最高裁判所の裁判官
今回の判決に関する態度とそれについての評価を入れて列挙する。(ただし、今回の判決に私が否定的である以上、反対意見を述べた裁判官以外に対しては基本的に×をつけざるを得ない)
一票格差 選挙制度
合憲  合憲  島田仁郎最高裁長官(判事)
違憲  違憲  横尾和子厚労省(今話題の社保庁長官経験者)
再検討 合憲  藤田宙靖行政法学者(国立大学独法化議論に関与、君が代強制には反対)
合憲  合憲  甲斐中辰夫‐検事(東京高検検事長)
違憲  違憲  泉徳治‐判事(最高裁事務系?)
合憲  合憲  才口千晴‐弁護士(経済法系)
合憲  合憲  津野修‐大蔵省→法制局(小泉政権時の内閣法制局長官)
是正  合憲  今井功‐判事
是正  合憲  中川了滋‐弁護士(この人の情報少なすぎる?)
合憲  合憲  堀籠幸男‐判事(ただし法制局参事官も経験)
合憲  合憲  古田佑紀‐検事(通信傍受法制定に関与)
合憲  合憲  那須弘平‐弁護士(民事畑)
合憲  合憲  涌井紀夫‐判事
合憲  違憲  田原睦夫‐弁護士(経済法系)
合憲  合憲  近藤崇晴‐判事(地裁、高裁時代は比較的リベラル)

*1:対象は明らかに島根だと思うのだが