連立を考える(2)

2007-11-12 - 小烏丸の日記で少し述べた内容についていくつか補足を。
問題自体は、その後辞意表明をした小沢一郎が、謝罪して党内の慰留を受け入れるという形で、正直うやむやになって終了しました。その後、守屋氏の防衛省の問題が噴出し、半ば忘れ去られたといってもよいかもしれません。まあ、しかし問題としては残っていると思いますので論じる意味はあるかと思います。

ちなみに私の立場をあらかじめ述べておくならば、政党活動における連立という行動には私は決して反対でありませんが、日本の議会の現状において、大連立という方策が採られることについては反対という立場です。その立場から、以下の議論を展開します。

まずは第一点目に挙げた「選挙制度改革で目指したのはイギリス型議会」という問題について。

第1点の観点からは、実質的二大政党の両党が連立を組むということは議会の目的(議論)を放棄することにつながります。

という観点について。

国会のそもそもの目的は議論することではなくて政策を作っていくこと、にあるんじゃないんだっけ。給油問題なんて正直自分には全く関係ない事で議論が煮詰まってしまうよりも、もっと切羽詰った問題はあるだろうと。

というご意見があったのですがその辺りから簡単に私の観点から述べてみたいと思います。
確かに、「国会=立法府」は「法律≒政策」を作るところではあります。ですが、議会制民主主義が当初想定していた議会に求められる要素は現在変容してしまっているということが出来るのではないでしょうか。
まず注目して欲しいのは、法律と政策の間の「≒」の部分です。なぜこれが「=」でないかということが論じられなければいけません。衆議院トップページこの衆議院のHPにおける「制定法律」の部分を見ていただければ分かると思いますが、大体一国会において100近くの法律が通過するのが現状です。また、これは中高の公民・現社でも習うことですが、そのうちの多くの法案が内閣提出法案になっています。議員内閣制だから当然ではないかと思われるかもしれませんが、法律の「作成者」と「提案者」と「決定者」の関係は決定的な差異をもっています。多くの法律の「作成者」は官僚つまり行政府の人間なのです。この場合、「提案者」は内閣で「決定者」は議会ということになるでしょう。しかし、内閣の決定は一般で言われるようにほとんどがその前の事務次官レベルでの決定の追認です。また、内閣で決定された法案を、基本的に議会多数派を占める与党が否決することはありません*1
しかし、内閣提出といっても、実際の多くの法案の素案は霞ヶ関の官僚によって作られています。*2この現状を問題視する見方はあります。私もあまりにも議員立法の少ない現状に対しては批判的です。しかし、その問題は後述するとして、その中でではなにが「政策」なのかという問題があるかと思います。それは何かというと「注目される法律」ということになるのではないかと思います。今国会では、それが「自衛隊の海外派遣(給油)に関する」法律であるだろうということになるでしょう。あるいは、野党側が提出しようとしていた「郵政民営化差し止め」の法律なども今回の政策になりえた法律といえるのではないでしょうか。
つまり、すべての「法案」が「政策」となるわけではなく、誰か*3がフレームアップしたものが「政策」として扱われるのです。
これは能力的にも、制度的にも仕方ないことと思われます。これは避けがたい「行政国家」*4への方向性として指摘可能な問題といえるでしょう。
その場合に、議会にあるいは政党に何が望まれるかということが考えられる必要が出てくるという話になります。(なぜなら官僚システムそれ自体だけでは、政策を生み出すことは出来てもそれに正統性付与することが難しいから。)それを踏まえたうえで、議会の意義を論じるとき、私はその重要性を議会における「議論」の点に特に重きをおいて主張するのです。

ただ、個人的には「官僚制」の自己肥大化や組織防衛などの問題が大きいと考えていますので、「行政国家」化が全面的に良いと考えているわけでなく。その方向性は踏まえつつも、出来るだけ多くの「法律」に関する議論を「政策」論議として取り上げるための議会の活性化、能力向上が必要だと考えています。それがここの政治家の能力向上(議員立法の増加などを意図)と共に、俺を最大限バックアップするような政策形成システム(政策秘書制度の導入や政党助成金は本来これを意図した、あるいはここに正統性根拠をもつ制度のはずであったが正しく運用されているとは言いがたい。)であったり、シングルイシュー政党の勃興を受け入れる政治制度(個人的には二大政党など政党数の減少は表に見える対立軸の減少を招くと考える。)であったりということが考えられると思っています。

*1:当然、様々な段階で例外はあります。族議員の政策制決定に与える影響力を高く評価して、日本において政治主導が実現していたといういわゆる政治的多元論者もかなり居ます。村松岐夫氏などはその代表といえるのではないでしょうか。また、与党ないで分裂が起こり、内閣通過法案が成立しない例も存在します。

*2:私の専門ではないですが、官僚内システムの一つとしてよく取り上げられるのが「稟議書」についての話です。

*3:それが誰かというのは大きな問題ですが、ここでは踏み込みません。

*4:ここではhttp://72.14.235.104/search?q=cache:xbKrtnotOi4J:mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/miyazaki.pdf+%E8%A1%8C%E6%94%BF%E5%9B%BD%E5%AE%B6&hl=ja&ct=clnk&cd=4&gl=jp(宮崎2005)における、行政国家の分類の①の要素を特に意識