種を滅ぼすということ

2012-07-02
Apemanさんのところで紹介されているが「うなぎ」
現在絶賛資源枯渇中です。
日本が世界の消費の7割近くを占めている…
そして日本人にはあまり知られていないがヨーロッパウナギはIUCNでもCritically endangeredに指定されている。
http://www.iucnredlist.org/apps/redlist/details/60344/0
ヨーロッパウナギの危機的状況については以下を参照下さい
http://www.wwf.or.jp/activities/2009/03/628623.html


完全養殖が出来ない=生態の完全な判明がなされていない
状況下で消費だけ増え、幼魚であるシラスウナギを乱獲肥育して消費するという海の焼き畑農業をとっている状況です
一部、東南アジア沖で卵の段階での確保も行われているようですが、それですら産卵を確認した訳ではありません。
ほとんど何もわかっていないのが実情な中で資源管理を行うつもりがあるとは到底思えない…
資源の減少に占める人為的側面は間違いなく大きいはずなのですが、そもそも生態把握が困難なせいでどの程度を人為的要素が占めるか不明
その不明さにあぐらをかいて食いつぶそうというのが現状です。
この不明な限りにおいて自分たちの責任ではないという姿勢は日本のいたるところで見られる…
その観点から言えば明らかにさえしなければいくらでも人のせいにできるということでもある訳です


この姿勢は、既に何度かヨーロッパウナギと同じようにワシントン条約の対象種にすべきと声の挙がっている日本と縁の深い魚に対しても共通しています。
マグロです…


うなぎについては、「今年は不漁で、値段が高騰し、庶民の口に入らないようです、値段が下がることを期待しましょう」という報道
マグロについては、「日本の食文化を担う*1マグロに対して、クジラと同じように日本文化に無理解な西洋白人が環境をかさにきて規制に躍起になっている」という報道
この二つの報道は、日本の生物環境に関する無理解と水産資源管理に関する鈍感さと直結しています。
確かに日本は水産資源の豊かな海に囲まれてこれまでその恩恵を受けて来ました…漁師には金が無くなれば日本海銀行や太平洋銀行に下ろしに行けばいいと言う方もまだいるやに聞きます。
しかし、この感覚を現在「農林水産省」や「漁協」や「大手水産業者」「大手小売業」が盛っているということが何よりも問題です。


激安ウナギで庶民の口に入るという動きとウナギの生産量が落ちていてウナギの価格が高騰するというのが両立していることがおかしいのです。
資源管理の失敗、しかもそれに対する冷静な分析を欠いたまま、他地域に進出というのは完全に資源収奪の構図です
「エビと日本人」とか思い出す…
本日の「ガイアの夜明け」はそういう意味で本当にひどかった…
農水省環境省は資源管理と海洋環境保全の観点からウナギの国内流通規制に乗り出すべき地点にまで来ていると思う。


肥育にしても
http://www.nn.iij4u.or.jp/~ookatou/net602/y560.htm
これは他の魚種についても言えることではあるが、魚粉による育成によって肥育の最大効率化を図ることで、より水産資源にダメージを与えているという側面もある
しかも必ずしも魚粉で育成せずとも育てられる品種についてまでである…
環境負荷という話を言い始めるとほとんどの牛は食べられなくなるが…それにしてもまだ穀物収穫は改善のしようもある
しかし、一部高級品種肥育のために、他の魚種を、しかも特定魚種水揚げ時だったらとることが出来ないような幼魚小魚を飼料化する等ということがあるとすれば到底看過できない。


海の環境について関心を持つ人が、魚の消費量が減っているというニュースに安心してしまうような状況は少しおかしいのではないかと思う…

*1:この話自体大いに疑いがあるが