大政翼賛会のススメ

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070815ig90.htm
読売新聞は選挙前後からなりふり構っていませんね。
参議院選挙の分析として、私は必ずしも二大政党制が進展しなくてもよい制度である、参議院選挙制度下の比例投票においても、二大政党制を志向したかのような票の動きを見たという分析を行った。これが、衆議院選挙であったならば、よりいっそうその要素は強まっていたであろうと予想できる。
今回の選挙においては、多少なりとも政策的対立が存在した。経済面での格差問題や、年金の在り方に対しての問題である。本来、それらは小さい問題であるとは決して思わない。しかし、上記読売社説で述べられるように、それ以外の大きな問題での「自民党」と「民主党」の大きな差は明確ではないように思われる。自民党支持者がよく言う「民主党は寄せ集めで、旧社会党から旧自民党までいるので、安全保障問題で党内意見が統一できない。」という主張があるが、改憲などの一部論点を巡っては自民党内にも異論があり、国際貢献の中身に対する意見にも自民党内に違いが存在するはずである*1
だが、そういった大きな違いが存在しない状況がある場合に、連合したならば大政翼賛会となにが違うのか?一党独裁と何が違うのか?争いなく容易に「議会内多数派」が形成できる議論に関して、議会内で有意義な議論が望めるとはとても思えない。党派がわかれ与野党対立があり、違いを出す必要性に駆られるからこそ政策的に比較的近い党派感であっても議論が起きうる。これが二大政党制ではなかったのか。これから、彼らの望んでいる(いた)二大政党制の内実が明らかになっている。与党に反対しない、表向きの野党(第2自民党)が欲しかっただけなのだ。そんな形だけの2大政党など*2ウェストミンスター議会からすらほど遠いのではないか*3
ドイツの例も、メルケル内閣下の大連立は、SPDの巧妙な振る舞いや選挙制度(小選挙区比例代表併用制といわれる、議席数が基本的に比例に対応している制度)、対アメリカ外交におけるCDU側のデッドロックなどの諸要因が複雑に絡み合っている。ちなみに一点言わせていただければ、CDUが保守政党であるといっても第2次世界大戦肯定論を唱える政治家やユダヤ人虐殺がなかったと唱えるような政治家はいない。日本の場合、それが与党第一党にも野党第一党にも存在するというのが致命的なのだが。

*1:代表的な議論の一つとして「親米保守」「反米保守」論があるだろう

*2:55年体制下の自民と社会の関係にも形式的要素は強かったが。

*3:ウェストミンスター型議会がそれほど良い制度かどうかに疑いもあるが。