公安条例の強化

拡声器使用禁止へ条例改正案 '09/2/4
 大音量の暴騒音を出す団体などに、拡声器の使用禁止を命令できるようにするため、山口県は3日、暴騒音規制条例の改正案を県条例審議会に諮問した。審議会は原案通りに可決、答申した。県は今月中に開会予定の県議会定例会に改正案を提案する。

 現行の条例では、警察官が暴騒音を確認した場合には音量を下げるように命令でき、6カ月以下の懲役か20万円以下の罰金の罰則規定もある。ただ、暴騒音を継続する間に休憩を挟むと、いったん発した命令の効力が消えるなど、効果的な取り締まりが難しかった。このため、改正案では、暴騒音の被害を受ける周辺地域と時間を指定して拡声器使用を禁止できる条項を新設する。

 審議会では、憲法が保障する表現の自由に関する質問が相次ぎ、県警側が答弁。2000年に山口市であった全日本教職員組合の全国集会に対する政治団体の街宣活動で3人を現行犯逮捕した一方、労働組合への適用はないことを説明した。異論はなく、全会一致で可決した。

山口県条例審議会委員名簿(委員は五十音順)
委員 岡本博志  北九州市立大学法学部教授
   勝山浩嗣  山口地方検察庁次席検事
   野村雅之  弁護士
   林田祐美  アルソアあくあひろ代表
   平中貫一  山口大学経済学部教授
   松成恵   山口県立大学共通教育機構準教授
   安光真裕美 山口県地域活動連絡協議会副会長

 政治的発言の抑圧を目指した法案であるというような陰謀論的な立法趣旨があるとは思わない。実際のところ警察当局には、暴走族などをより効率的に取り締まる法律を作りたいという意図ではあるのだろう。


 しかしながら、立法意図はどうあれ、この条例は結果的に政治的主張の圧迫をもたらす。条例成立後の大きな音を発する路上での活動は、文言上条例違反であるが、行政当局のお目こぼしで存在しているに過ぎなくなる。
 日本ではパブリックスピーカーのような政治行動は確かに市民権を得ているとは言い難い。路上での政治的発言は、右翼の街宣か、選挙前の政治家の顔売り程度でしか見ないだろう。しかし、路上での政治的弁論は、民主主義の源をポリスに求めるならば最も本質的で重要な意思の発信形態である。


 「労働組合への適用はない」との説明をもって左派が賛成に転じたのであるならば、それは恥ずべきことだ。右翼の街宣も、組合運動のアジテーションと変わらない政治的な弁論である。場合によっては、暴走族の爆音すら政治的発声と言えるかもしれない。
公安条例の強化案ともいえるような、このような条例が成立することには断固反対する。