参議院選挙が終わって(1) 野党:共産党、社民党の左派勢力に注目して

 結局なにが争われたのかよくわからない参議院選
消費税はもともと自民も上げる(上げたい)と言っており選挙争点であったとは言い難い
 みんなの党は消費税上げは言ってないようなことを渡辺氏が言っていたようだが、もともと新自由主義的な立場で経済面に言及していたのだから、そのうち直間比率の見直しや法人税下げ・消費税上げとは親和性が高い。


 消費税上げに明確に反対の立場だったのが共産党社民党
 両党ともにその面を強く押し出そうとしたようだが、選挙前の報道はすでにご覧のとおり、マスコミは消費税上げを既定のことかのように報道し、消費税上げ反対の声などは取り上げられず。BLOG界隈でも、消費税上げ、法人税下げ反対の議論の際に枕に取り上げられるのは「赤旗」の記事
 これは「赤旗」が共産党の政党紙であるかどうかの問題以上に、既存マスコミがこの問題についてあまりにも論じる言葉が少なかったということに尽きるだろう


 結果だけ見れば、自民の復調、民主の低落、みんなの党の躍進、その他野党の低調ということになる(公明は別)
 理由は簡単:自民の復調・民主の低落は一人区での結果
 みんなの党の躍進は、比例区で右から左までの広い範囲での得票に成功したこと*1


 東京選挙区で共産党小池晃氏が落ちて、みんなの党の松田公太氏が当選したのは予想はしていましたが
結果を見たらショックではありました


東京選挙区の投票率は58.70パーセントで当落ラインの二人の得票を比較すると
松田公太氏 656029票
小池晃氏  552187票
ですからその差は大体10万票
 社民党の森原秀樹氏が約9万5千票ですから、社共共闘しても逆転はできていません*2


共産党の得票数は
前回(2007年)参議院選挙で、田村智子氏が554104票(投票率57.87パーセント)
前々回(2004年)参議院選挙で、今村順一郎氏で453287票(投票率56.08パーセント)
である意味で今回の得票数は組織得票としては現状でキャップを迎えていると言えるでしょう
*3


 今後、共産党社民党も党内で参議院選挙の総括が行われるものと思います。
 今回、共産党小池晃氏というマスコミにおける露出などが党内でずば抜けて高い期待の候補者であるにも関わらず敗北するにいたった、これは明らかに痛手である、今後小池氏に代わって誰が共産党のスポークスマン的役割を果たすのかを決めていくことが必要となる。


また、社民党は今回の選挙で(過去数回を振り返ればわかっていたことでもあったが)、都内では多くて20万票*4、固い基礎票にしても10万票を切ることが明らかになってしまった。今後、都内での立候補に関しては他党(民主あるいは共産)との連携を考慮していかざるを得ないと自覚してくれることを強く望む。*5


 共産党社民党も現状では「敵失」待ちの戦略しか持っていない
 今回の選挙のような、自民がダメだからと大幅に議席を減らした衆議院選挙からまだ日もたっていない、民主もダメと内閣支持率が大幅に下がって迎えたまさに「敵失」の下での選挙で全く得票に伸びが見られないということは、両党の「敵失」待ちの戦略はまったく効果を見せていないということになる。
 結果、既存不満票をうまい具合に「新自由主義」の本音を前面に打ち立てているわけではない(かといって巧妙に隠しているかというとそんなことは全くないわけだが)が「構造改革*6という小泉政権の残滓*7を大きく掲げた、みんなの党にかっさらわれてしまった。


個人的には『ポストデモクラシー』(コリン・クラウチ)のイタリアにおける選挙の話(ベルルスコーニの新党の躍進)を思い出した。


 なんらかの攻める武器を共産党社民党は獲得しなければならないとともに、政党としての在り方を抜本的に見直していかないことには今後政党としての存続は厳しくなっていくのではないかと思われる(この点については特に社民党共産党はさすがにまだ20年単位では存続は可能だろう)。

ポスト・デモクラシー―格差拡大の政策を生む政治構造

ポスト・デモクラシー―格差拡大の政策を生む政治構造

*1:実際に地区・組織ごとの得票を精査する必要がありますが、今回投票率は伸びておらず既存政党支持層から薄く広く集め、その上に各党の中でトップクラスの無党派得票を得たということだと予想されます。

*2:当然、もし本当に共闘した場合には社民の中の共産アレルギー層が一部離脱するため、上乗せ幅は単純な和よりも少なくなるということのほうが予想されます。相乗効果よりも…

*3:ちなみに2001年参議院選挙では、共産党は緒方靖生氏が約63万票をえて当選している。投票率は53.27パーセント

*4:ただし20万票の得票にしても上田哲氏の個人得票という要素がかなりあったことなどは理解しなければならない

*5:ただし、民主は今回の蓮訪氏の得票でもわかるように無駄な得票が多すぎる=政党組織として有意義な票割りができない政党である。

*6:もともとの語源を考えるとこの語を新自由主義者がつかうことには皮肉を感じるが

*7:もし選挙が政策を合理的に判断する投票者による投票によってのみ成立しているとするならば、皆未だにそんなに「小泉構造改革」好きなのかと大きな疑問を抱いてしまう。